シサイの妄言

「――だから何度も言っているだろう。その申し出に応じるつもりはない。用心棒を探しているなら本職に頼めよ」

≪しかし。どうか考え直して頂きたい。確かに正義の味方であるリヒト殿は私情を排し、公のために尽くす方。特定の人物や組織の肩を持つおつもりはないのでしょう。しかし。我々騎士団も似た志を旗印にしております。弱き者のために巨悪を挫く。此度の遠征には貴殿のお力が必要です。第一、形なきものの教会に身を寄せて幾日になられるか。お姿が見られなくなって心配している民も多い。どうか≫

「……誰か来たらしい。もう切るぞ、ナイト。ここにはもう二度と電話をかけて来ないでくれ」

≪お待ちください! 考え直して頂きたい。こんな事は間違って、≫

 

 ノックをした扉の向こうで、がちゃんと受話器を置いた音が派手に響いた。オレは分厚い扉を開く。

 机上にある電話へ今まさに受話器を置いたシサイが咳払いをして、にっこりと微笑んだ。

「失礼致しました……今日も一日教会の中に居られて退屈、だったでしょう。そろそろ、食事の支度をしましょうか?……リヒトさん」