執事と少女

 雨上がりの空をゆっくりと鯨が泳ぐ昼前、点々と道路に続く水溜まりを追って宿を出る。

 小さな水面を覗きこむと、青空を背景にした自分の隣に、三つ編みの少女が映ったが、踊るような足取りで姿を消す。

 顔を上げて見回しても辺りには誰もいない、この子は雨後の水鏡の中でだけ生きられる幻なのだ。

 彼女の後を追う、水溜まりを渡り歩く、やがて全て干上がってしまう前に。