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さよなら人魚姫

「世界の果てが見たいの」

 少女は笑う。雨が降っている今のうちにと。

 クロは懸命に運ぶ。両手を皿にして水を満たし、そこで泳ぐ人魚を運ぶ。けれど急げば急ぐほど、水は零れた。歩みを緩めては直に雨があがってしまう。

 行けども行けども、丸い星を周回するだけ。果てなど見えてこない。

 とうとう水の尽きた手の中で、やがてヒレから溶けていく少女は笑った。

「ほんとうは知っていたわ、果てなんてないってこと。でもそれを確かめてみたかったの、夢見るだけじゃやってこないんだもの。真実も、王子様も」

 そうして、最後の人魚姫は地上で泡になった。ぽかりぽかりと、破裂する気泡の音色で歌を奏でながら。