· 

跳ね回る橙色

「大将、大将、ドクス御大将ー! 大変です、一大事であります!」

 

 どたばたと執務室に転がり込んできたオレンジ頭に、ドクス大将は目に見えて不機嫌そうに眉根を寄せた。

「うるせぇ。どうしてお前はもう少し静かにできないんだ、マヨア。大体、お前がその調子で大事だ大事だと言ってる件は、決まって俺にとっての些事じゃねぇか。え? 仮にも俺の部隊で少佐を名乗る地位なら、もっと利口にしてみせろ」

「――ドクス大将、ひとつお耳に入れたい事が御座います。宜しいですか?」

「そういう振る舞いができるんだったら最初からやれよ」

「あいてっ」

 椅子の背中に敷いていたクッションを投げつけると、マヨアは大げさに飛び上がってから次いで、有難う御座いますっと声を弾ませた。礼を言われる筋合いはないが、いちいち問いただしていたらきりがない。紙上に走らせていたペンを一旦置いて、クッションを両手で抱きしめる部下に視線をやった。

「それで、用件はなんだ。三月ウサギよろしく跳ね回らず、手短に済ませろ」

「はい。それが……最近どうしても」

 窓の外、カーテン越しに鳥の声が遠のく。

 

「どうしても……ドクス大将成分が足りなくて」

「……あ?」

「お肌はかさかさ、心はがさがさ。女の子を吸血しても満たされず、野郎を殴っても満足せず。なので、大将! 抱きしめさせて下さい! であります!」

「帰れ」

「なんと?」

「土に帰れ」

「なんだかさっきより酷い罵声になってる気が!?」