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ストロベリーサンデー

 抱きしめた手の中から、君が溶けてこぼれていく。

 ああ、儚いな。最期に聞いた断末魔を何度も頭の中でなぞりながら、一つのショートケーキになりつつある彼女を抱きしめる。

 ごく当然のように。ケーキなんか圧迫したら潰れるに決まっていた。茫然としたまま、少女はイチゴと化した両目をきょろりとさせて首を傾げる。そうか、その目じゃあもう何にも見えないんだね。その無知さが愛しくて、鼻をかたどるデコレーションクリームを指で掬って舐めた。

「やっぱり最高だ。ちょうど小腹が空いてたんだよねえ。君と出会えて本当に良かった。こんな綺麗な満月の夜に美味しいケーキを食べられるなんて、神様の思し召しだよ」

 だって君も僕を好きって言ってくれたものね。凄く凄く嬉しかった。本で読んだんだけど、食べ物は美味しく食べられるのが幸せだから、大切にしなくっちゃいけないんだよ。現状が彼女へ与えられうる最上の幸福だと確信を深めて、ただひたすらに、君を貪り食う。

「美味しい、美味しい」

 黒いパンプスについた生クリームも残さずに。透けるように白い肌だったから、雪みたいに真っ白なクリーム。アスファルトにどうと腰を下ろして、スポンジ塗れの手を月光に浸す。

 明日は、プリンサンデーが食べたいな。