古物屋の理屈

 商店街の一角に店を構える古物屋の店主は化け猫なので、よく様々なものに姿を変えている。中でもよく目につくのが少し高慢な風情のある青年貴族で、いかにも見た目が良いため出歩く度に小さな騒ぎになっている。

 今日も古物屋は黒髪を撫でつけた正装に、吸血鬼みたいなマントを羽織って出かけていた。後ろには馴染みの執事を引き連れていて、何も事情を知らない人間が見たら、誰も彼を猫だとは思うまいなと鋏屋は小さく笑った。

 以前、どうしてわざわざ年若い男の格好で出かけるのかと聞いた事がある。人の姿をしていながら獣のような抜け目ない金の瞳を眇めて、そりゃ人間ってのはオスメス問わずに若いのが好きだからだよと答えた。じゃあ人間の女にちやほやされたいのかと聞いたら、阿呆と罵られた。お前、猫が人間のメスにどう思われたってどうかするもんかよ、俺の好みは美人の三毛なんだ。

 簡単に言えば、若くて見かけも良い人間の方が、上手くいく商談が多いらしい。まあ人の世で商売をするなら当然か、と妙に納得したのを思い出した。角を曲がる直前、執事がこちらに気づいてそっと人差し指を唇に当てた。その密かな媚態があんまり猫のようだったので、手を振り返す鋏屋の仕草も秘密めいたように静かになった。