鋏屋の芝居

 この街は観光都市として栄えた。栄誉ある一番最初の文字を名前に戴いて、誰もが煌めく休日と、よりよい自らの未来を夢見てやって来る。

 ここに来て住み着く人、暫くの避暑旅行を楽しんで帰っていく人、ここで生まれた人。役場のお偉方だって、路地の隅で流れる雲を日がな数えている智者だって知らない。

 誰も知らない。この街の青空は鳥籠の天井なんだって。俺だけが知っている。誰もが自由に出入りできるのに、気づいた人から囚われてどこにも行けなくなる。

 ようこそ、空想都市アルファの裏側へ。境の隙間に脚を盗られた人、神様の瞳を見てしまった人。ありもしない嘘の街、区嘘雨都市オメガ、不可視の雨が降り続く場所。外出の際は傘をお忘れなく、ご入用なら商店街の傘屋に寄るといい。俺から口をきいておいてやるよ。