菓子屋の魔法

 美味しいお菓子を作る秘訣はなんですかと問いかけると、お菓子な菓子屋は飴玉のような丸い瞳をくるりと回した。そりゃあ新鮮な素材、無駄のない手際、余熱のちょうどいいオーブンに、お客様が喜んでくれる笑顔の魔法だよ!

 机の上にはショートケーキがワンホール。誰も手を付けていない状態で置かれている。切り分けるナイフも、取り分ける皿もない。横には写真が置かれていた。白い肌が眩しい、笑顔の女の子の写真。苺にも似た真っ赤な宝石のイヤリングを自慢げにつけて、ウェーブのかかったクリームブロンドをなびかせている。彼女は二日前から行方がわからなくなっていた。

 取り調べのために菓子屋を呼び出した騎士は、勢いよく拳を机に叩きつけて声を荒げた。写真の人物と同じ色の短い髪は、怒りのために逆立っているように見える。彼女をどこへやった、お前はこの子を食い物にしてしまったんじゃないのかと。乱暴な振動で繊細なケーキが崩れないよう、慌てて両手をかざした菓子屋は、きょとんとまばたきをした。何言ってんのさ、人間がお菓子になんかなるもんか、お菓子は最初からお菓子なんだぜ?

「だからきっと、この子も最初からケーキだったんだよ。うん、絶対にそうさ。ボク、材料をぜんぶ自分で見つけたんだもん。その苦労が報われて、こうして今や美味しい美味しいショートケーキだ。騎士さま、一口食べてみない? きっと気に入ってもらえると思うんだなあ。――大好きでしょ、このケーキ?」