菓子屋の詭弁

 怒られるのを病的に恐れる子供だったんだ。菓子屋は焼き上がったジンジャーマンのビスケットを並べながら歌っている。白い大皿にひとりずつ整列していく人型のお菓子。ふっふっふ、夢見がちなパティシエはご機嫌だった。

「間違えたくないあまりに、なんにもできない有様だったよ。ママ達は怖い魔女ばかりだったからね、不燃物のゴミを燃えるゴミの屑籠に入れてしまったマイクは遂に帰ってこなかったんだよ。ボクなんて運が良い方さ、コップを割ってしまったのにこうしてぴんぴんしてるもの」

 哀れなマイク、帰らぬマイク。でもそもそも、運命は結局以前からとうに決まっていたのだ。彼は最初から帰らぬ事を定められていた。かわいそうなマイク、実験体ナンバー九九七、火噴きのピエロのはずが噴き出すのは冷汗ばかりだったんだからそりゃそうか。ひょいと菓子屋はクッキーを一枚つまみ食いして、執事に笑いかけた。

 マイクはボクだったかもしれないんだからね。どこかで大切な鍵を落っことしていたら、もしくは意地悪な魔女の気まぐれで誰でもマイクになってしまうんだ。勧められたクッキーを丁重に断って、執事は大人しく紅茶だけを啜っている。