空想都市の日常

 通りの向こうを眠たそうな黒猫が歩いていく。

 菓子屋の店先から焼き立てのクッキーの匂いが漂ってきた。

 鋏屋の店先からは刃物を研ぐ音が聞こえて、案内屋の窓口が静かに開く。

 初めて訪れた大都市に胸を躍らせながら周囲を見回していると、向こうから燕尾服を纏った執事がやってきた。黒髪の多いこの街では珍しい金髪だと見つめていると、目の前まで近づいた彼は小さく、ようこそ、と囁いた。――気がした。