案内屋の我儘

 同志、と呼ばれる声に振り向いた。身の丈を超える旗を手に、肩で風を切って歩いてくる案内屋の姿はいつもの事ながら目立っている。観光地のガイドをするのが主たる仕事なのだから、人目を引く格好なのは道理なのだが。それ以上に、往来の人々から頭一つ分どころか、二つ分飛びぬけている体格の良さも衆目を集める要因だろう。自分は執事であって同志ではないのですよと何度説明しても、結局彼は首を傾げるばかりだったので、最近は訂正を諦めている。

「同志は古物屋へ向かう所か? 良ければ自分も同行したいのだが」

 断る理由は特に無い。頷いて先導を促したが、彼は微笑むと隣合って歩きたいと申し出て来た。

 仕事中はこうして誰かと並んで景色を楽しむ事が無いのだと。成る程、確かに彼は常に先導者である。こんな風に、野の花の名前を言い当て合ったり、流れる雲の形が何に似ているか言い合う機会も無いのだろう。聞き上手の案内屋の相槌に誘われて、道中話の種が尽きる事はなかった。