騎士団の証言

 その騎士aは騎士団発足以来類を見ないほど優秀な戦績を残しました。ひとたび戦場へ出れば確実に使命を遂行し、いかなる存在が敵対しようと決して屈しませんでした。時に、味方を犠牲にしなくてはならない切迫した状況においても、彼は常に最善を尽くし、適切に処理をしました。生き延びられない味方へ憐憫を見せましたが、それが後々の遺恨として心的外傷を残す事は無かったようです。

 騎士aにまつわる興味深い事例は多数存在しますが、彼の特異性は戦場においてではなく、逆に本騎士団の大規模長期遠征が終了した後にあらわれました。未開の土地へ赴き、時には祖国へ敵対する国家と熾烈を極める交戦を経て遠征は続き、それにより多くの騎士達は遠征終了後、自国での平穏な生活に戻ってからも度々トラウマに苛まれる事になります。主義主張が違うとはいえ、敵対存在もまた自分達と同じ人間であり、時には寝食を共にした仲間を■■にせねばならないという極限状態が、彼らに消えぬ傷を残してしまったのです。

 しかし、この騎士aのみは例外でした。彼の肉体はいかなる異常もきたさず、各種心理テストにおいても常に安定した結果を残し続けました。騎士aはこの大規模遠征が終了してからも、自ら率先して戦地へ赴き、■■年間過酷な務めを果たし続けました。騎士aを知る者は、「騎士aは生きるか死ぬかの二極を迫られる戦場にこそ安楽を見出しているようだった。彼は事実、敵と味方が明白に区別される環境の方が安らぎが得られるのだと語っていたのです」のちにこの証言を提供した元騎士は、より鮮明にその情景を思い出してみると我々に約束し別れた後、一ヶ月後に■■し、それ以上の情報を聞き出すのは永久に不可能となりました。

 後に当時騎士団へ所属していた騎士a本人にこの件を問い質すと、彼は一瞬極度の緊張状態に陥りましたが平静を取り戻し「それに関する証言を黙秘した場合、自分の生命や今後の生活は脅かされるか」と問いました。それに対し我々は、この調査はあくまで内々のものであり、常識的な範囲内で行われている、無論黙秘権の使用も認められると伝えると、彼は以後こちらの問いかけに対し一切の反応を見せなくなりました。そして僅か三日後に所定の書類を揃えた上で騎士団の職を自ら辞しました。彼は現在、ある観光都市でガイドの仕事をしていると聞いています。