シサイさんを紹介します

「こんにちは、先生。宿題をやってるの、お話しいいですか?」

「ええ、もちろん。私などでお手伝いができるなら、喜んで」

 シサイさん。わたしがカガミのお家に住む前、お世話になっていた教会の神父さまだ。シサイさんが怒っているのを見た事がない。

「怒るという感情はきっと私には不要なのかもしれません。それを望まれなかったのでしょう」

 怒るかどうかって自分じゃ決められなくて、気づいたら怒っちゃってるものだと思うんだけどなあ。

「それはアカリさんに、きちんと心があるからですよ」

 ぜんまい仕掛けの神父さまは微笑んだ。陽だまりのように優しい顔。

 シサイさんはつくりものなんだそうだ。でも、わたしにとってこの時間は本物で、価値のあるもの。お忙しいところ、有難うございました。頭を下げる。

「アカリさんはゆっくり大人になっていいんですよ」

 まるで、大人になんかならなくてもいいみたいに。