お馬さんに乗りたい

1.

「ナイトさんの乗ってるお馬、空を飛べちゃうし、脚が八本もあって凄いなあ……」

「見方によっちゃかなりキモいけどな」

「聞こえておりますぞ、カガミ殿」

「地獄耳ッ! ナイトさん、申し訳! 今のは冗談なのでどうぞ今後ともご贔屓に!」

「いいや、別に気分を害したりなどはしていませんが」

 

「……」

「……おお、アカリさんの見つめる攻撃」

「……アカリ嬢は、私の馬に乗りたいのですか?」

「乗りたい!」

「ちょ、アカリ、やめとけって。八本脚の馬とかヤバいって。具体的に言うとたぶん、むっちゃ乗り物酔いするって」

「過保護ですな。このスレイプニルは斯様に野蛮な乗り物ではありませんぞ」

「ううむ……でもなあ」

「カガミ、ちょっとお空のお散歩いってくるね!」

「もう乗ってるし!」

 

2.

「ヤバい、ヤバいって。どうしよう……アカリが空の藻屑になっちまったら、せっかく目覚めかけてた俺の父性が正気を失うレベルで嘆き悲しむっつーか……」

「何もない空間に向かって何を語り掛けていらっしゃる」

「ぬおおっ!? え、なに、速ッ。もう行って帰ってきたの!?」

「後ろ足で蹴った水瓶が倒れるまでの間に、宇宙を天翔るのすら造作もありません。今回はこれでも景色を楽しめる程度に速度を落としたのですが」

「や、でもアカリ、なんか無になってるけど」

「え? ……おや」

「アカリさーん、しっかりしてーッ! 今日の晩御飯、人参いっぱいバターソテーしてあげるからァー!」