天使と来世

 むかし、むかし、

 ある死者が天使に言いました。

「来世はまったく違うものになりたい。いまの自分とさっさとおさらばしたい」

 天使は言いました。

「わかりました。ならあなたの来世が何になるか決まるまで眠っていてください。誰も来ない、静かな場所で」

 

 別の死者が天使に言いました。

「来世もいまの自分と同じがいい。愛する人が好きだと言ってくれた、この自分のままで過ごしたい」

 天使は言いました。

「わかりました。なら同じあなたが来世を許されるまで、どこでもない街で過ごしていてください。賑やかで、変な事ばかり起こる夢の街で」

 それがこの街。生と死の境界、眠りの内にある夢の場所。

 

「ま、ただの御伽噺だけどな」

 ぱたん。絵本の閉じる音。傍らにはささやかな寝息。