カガミの矜持

 大人にはいつだって、カッコつけて立ち向かわなくちゃいけない時がある。

 例えば、自分より小さなものを守りたい一心で頑張っている子供を見たら。相手取っているのがライオンだろうが、ゴーレムだろうが、キメラだろうが、退いちゃいけない。退ける訳がない。

 猫の妖精、ケットシーを抱いたアカリは、ぽかんと口を開けたまま俺を見上げている。その顔は、どうして俺が体を張って庇っているのかわからないと語っていた。暗い森に出掛けたのはアカリの勝手で、足を怪我したケットシーを放っておけなかったのもこいつの都合だ。でも、助ける。

「あたぼうよ。だって正しい事をしたのに、報われなきゃ嘘だろ?」

 くしゃり、アカリは今まで堪えていた涙に顔を歪ませる。さあ、踵を返して目の前の化け物と向き合う。獅子の頭、山羊の体に毒蛇の尾。それがなんだ。今日の晩飯は二人の大好物のシチューだ。

 どんな化け物だろうと、俺達の日常は壊せやしないのだ。