アカリの悪夢

「魔法なんてない」

 ぐちゃり。アカリの冷え切った言葉に呼応して、飛び回っていた使い魔が墜落する。眼球に蝙蝠の翅が直接生えた小さな悪魔は、ぐえ、と人間じみた断末魔を発した。

「お前は存在していない。およそ現実ではありえない事なんて起こらない」

 ぼとり、ぼとり。使い魔の軍勢は次々に惨めな最期を遂げてゆく。操り人形の糸が切れ、イカロスの翼が溶けるように。アカリの否定が魔法を殺していく。

 金切り声を上げて物陰から魔女が飛び出した。悪意をもって使役していた小悪魔らと同じく、魔法が存在する前提があって呼吸を許されていた御伽噺の産物は、いま使い魔と同じ末路を辿ろうとしていた。

 少女が息を吸う、家族の平穏を奪おうとした悪い魔女へ引導を渡すために。しかして、それを止めたのは他ならぬアカリの家族、傷ついたカガミの腕だった。

「もういいんだ」

 酷い悪夢だ。

 誰より魔法や夢の必要な子供が、それを殺めて回るなんて。