シサイの豹変

 喉の渇きで目が覚めた。水を求めて教会の廊下を歩いていた少年は、どこからか響いた痛々しい声に足を止める。それが全てをかなぐり捨てて命乞いをしている人間のものだと気づいたのは、応答する男があまりにも冷然としていたからだ。

「いいえ、もう猶予はありません。貴女はこの短期間で三度も過ちを繰り返した。もはや更生の余地はないと断定します。――落胆する事はありません。呼吸をしなければ生存できないのと同じく、何かを絶えず殺めなければ生きていけない。貴女は、そういう個体だったのでしょう」

 慈悲を求めるか細い叫びは、ごぼりと泡立つような異音に塗れて潰える。次いで、中身の詰まった麻袋が倒れるような音がした。

 ふと自分が起き抜けた理由すら忘れている。膝の震えが止まらない。そう、あの冷たい男の声は。

「よき旅路を。……死肉は有難く頂戴しましょう」

 聞き馴染んだシサイの声に違いなかったからだ。