童話作家の紙片

 それは月が物語る御伽噺。鏡に刻まれ、永劫消えぬ彼の夢。

 幼くしてこの世を去った少女への追悼。

 円かの月が観ているこの夢は、彼女の否定で全てが終わる。

 

 三年の月日がこの御伽の国を育てた。

 三通りの過ちを経て盤石となり、かくして輪は内向きに閉じる。

 三度目の正直、もう誰も目覚めない。

 

 童話作家はペンと踊る。例えインクが尽きようと、例え紙が尽きようと。

 今度は中天に座す満月に筆を走らせる。

 死して目覚める幻を見よう。

 

「この原稿が誰かの目に触れる事はないだろう。唯一、彼らは私の頭の中で躍動し、人生を謳歌し、苦悩し、争い、愛を交わした」

「けれど誰かがこれを読んだなら、どうか一緒に祈ってほしい」

「願わくば終わらぬ夢を彼女に。楽園の死角、時計の壊れた不思議の国で。尽きぬ幸福を歌うのは、我が最愛の――」