デセオの余暇

 自己犠牲は美しい。それは何者の説得も寄せ付けない独善に満ちているから、とにかく悲劇によく合うのだ。

 悲劇とは誤解によって生まれ、不和により加速し、離別をもって完結する。

「吾輩は、悲劇も大好きだぞう。喜劇と同じくらい、等しく愉しんでいる」

 舌先で飴を転がしながら、事切れた二人の人間の上に寝そべって、邪神は今日の青空を見上げた。

 両者共々、見事に刺し違えた屍の寝床。余分な力の抜けた人体は水の詰まった袋のようだった。路地の向こうから、この袋小路へ誰かが駆けてくる。好きなだけ体温を貪った後に立ち上がると、野良猫のように平べったい手を振って、てくてくと壁を上り始めた。

 終わったお芝居に興味はない。

 幕は下りる。かくして全てを目論んだ一人の暴君は去った。