竜の根城

 祭壇が燃えている。象徴を何も持たない私達であるから、信ずる人がいなければここは文字通り、ただの伽藍堂だ。

 生物が細胞を分裂させて体躯を延ばすように、その建造物は縦横無尽に改造を続けている。今もやむ事はない。そう、燃え盛るこの時でさえ、クレーンは動き、大工は働き、横へ縦へと体を伸ばしている。

 誰かが背後で銃を構えた。それと認識する前に、背を裂いて人狼の腕が露わになった。射手の頭を鷲掴み、西瓜を割るように圧し潰す。誰も彼の死を悼まない。誰もこの喪失に胸を痛めない。

 駈け込んで来た薬屋がみっともなく息を呑んで喚いた。あんた、神父さん、御堂が焼けて人が死んで、それでも平然とできるのかと。

 私は笑って応えた。貴方達は終焉に関して、少し感傷的になっているのではないでしょうか。

 形なきものへ還りましょう。即ちそれは、生まれる前に遡る。不幸を捨てるために全てを捨てる。家族、幸福、その命でさえも。