シサイの玩弄

 目の前で膝を屈している生き物は、本来は神話や伝承でしかお目にかかる事のできない神秘だ。シサイは油断なく拳銃を構えたまま、苦しげな呼吸を繰り返すナイトを観察する。心臓のすぐ横に風穴が空いているのだ、気の遠くなる痛みに違いない。

 ここで仕留めてしまえば、苦も無く取り込む事ができるかもしれない。吸血鬼が持つその不死性を我が物にすれば、さぞ有用に作用してくれるだろう。

 数秒の逡巡。頭の中でナイトの両脚を撃ち、生きたままその体を喰らう所まで想像してから、息を吐いて銃の安全装置をかける。ジャケットの内ポケットへそれをしまってから片手をそっと伸べた。

 いずれこの吸血鬼を晩餐の皿へ並べる日が来るかもしれないが、それは少なくとも今日じゃない。こんな弱り切った相手を不意打ちで掠め取っても、なにも満たされやしないのだ。

「手を貸しましょう、ナイトさん」

 どうせなら、この両手で一から全てを奪ってしまいたい。