シサイの虚言

 枕元で黒電話が鳴っている。浅い眠りから覚めてシサイは手を伸ばした。受話器を掴み名乗ると、聞こえてきた声の持ち主は馴染みの相手だった。やあ、お元気そうで何よりです。

 ベッドへ寝転んだまま電話越しに囁きを交わしていると、するりと背後から手が伸びる。肩を通り、首筋を撫でて声の生まれる場所を探り当てた妬み深い指。思わず漏れた笑い声に喉が震える。不意に神父の口から押し殺した笑みが聞こえたものだから、電話口の相手は不思議そうに是非を問う。当然、真実など語れるはずもない。正に、貴方だけを頼りにしていますなんて滾々と並べ立てている最中、貴方以外の誰かと同衾している事実を悟られる訳にはいかないのだ。

 ええ、貴方だけですよ。私が愛しているのも貴方だけですから。

 愚かな関係の糸は蜘蛛の巣のよう。だって教会の運営費もばかにならないのです。シサイは胸中ぼやいて、かちゃんと受話器を置いた。