シサイの言い分

「思うに、我々が愛しているのは……いつだって真実ではなく、偶像なのです。誰も彼もが不都合な真相へ美しい覆いをかけて、それで何もかもを愛したつもりになっている」

 頭からイチゴジャムを被った神父は指折りながら語る。御伽噺の中の善良な少年少女。書物の中の過たない指導者。愛すべき隣人、守られるべき無辜の民。

「そんなものはね、ナイトさん……ただの理想です。現実には居やしないのだと、貴方も認めるべきでしょう。守るべき貞淑な姫君はいないし、誉を与えてくれる王も居ない……凱旋を祝って、花を投げてくれる子供もいないのですよ」

 二歩進み、シサイはナイトの背中に追いついた。同じように赤黒いそのシルエットの隣に並ぶ。

「ねえ、ナイトさん」

 大義名分に固執するから首が締まる。

 血みどろになって戦場を食い荒らす我々は真実、ただの二匹の化け物に過ぎぬのだと。認めたらきっと楽になれる。だって私達はこんなにもよく似ているのだから。