迷子と悪魔

 どうして夕暮れは、誰も彼もをこんなに心細くさせるのだろう。ノワールは幾度目かもわからないしゃくりをあげながら、物陰を伝うようにして歩いた。ブランシュが、いない。

「ブランシュ……そこ……?」

 力なく電柱の影を覗く。真っ赤に泣きはらした瞳は懸命に親友を探すも、やはりそこにも見当たらなかった。人間の町に、ひとりぼっち。出口のない不安に思わずうずくまりかけた直後、夕日を嫌うかのように凝っていた影が音もなく、立ち上がった。

 その気配は、悪魔たるノワールが一番良く知るものである。間違えようはずもない。

 同族の気配だった。

 何時も大した理由もなく彼女を苛み、爪弾きにする同胞らを思い出して、身を竦ませる。影の悪魔はゆらりと身体を揺らしてノワールを眺めた。どうやら微笑んでいる、らしかった。

「――わかりやすい迷子だな、お前」

「ひっ……あ、悪魔……!」

 悪魔は悪魔であるゆえに、他人の心の甘やかし方や抉り方を良く知っている。だからきっと、目の前の相手だって彼女を責めるに違いないのだ。

 だから、だから。白黒の外套から伸ばされた手が握っている飴だってきっと――飴?

「悪魔はお前もだろ。立派な角と羽、尻尾もあるじゃないか。いいからそれでも食って泣き止めよ、一緒に友達を探してやるから」

 ぽかんとする少女の手に赤と白のロリポップを握らせて、鳥の悪魔は満悦と笑う。

 夕暮れ時の、とある逢う魔のお話。