四行小説/不始末記

 観光地として栄える空想都市、その大通りは両脇に様々な店舗が軒を連ねた商店街になっている。鋏屋の店から、黒揃えのスーツを着た山高帽の男が出てきた。爛々と上機嫌に黄金の瞳を輝かせて人混みに紛れて行く。...
眠り姫  天蓋からさがる布が安寧を守る広々とした寝台に、護衛屋の少女が横たわっている。穏やかな寝息、安らかな顔。傍へ歩み寄った案内屋はその静寂を尊ぶように眺めている。硝子の棺に収まった白雪姫を見守るように。...
赤い安堵  案内屋の目が嫌いだった。あの青い目が。沖合の海をそのまま掬い取って、流し込んだような深い青色が。...
夜半の鬼走り...
百と九十三の幽霊  これまでの人生で食べてきたパンの数を正確に記憶している、と断言する人間とは付き合わない方が無難だ。大抵の場合はほらを吹いているだけだし、万一にも本当に覚えていたとしたら、やはりそんな抜け目の無さ過ぎる人と縁を繋ぐのは恐ろしい。...
お菓子な家  お菓子の家、魔女の家とは名ばかりのメルヘンである。黒い森の更に奥、真四角の白い箱のような建造物が魔女達の拠点だった。黒いローブを目深に被ったその人物は、懐から使い込まれたランタンを取り出す。灯をともしながら内部に通じる扉を潜ると、狭い小屋の中央には地下へ続く階段がぽっかりと口を開けていた。...
或る下手人の消息...
おはよう、執事さん  記憶は、失われたりしない。単に情報が引き出せなくなるだけだ。器官としての老朽化か、それとも疾病などによる損傷か。だから、跡形もなく消滅する訳ではない。この世に消えて無くなるものはない。質量は一定だ。...

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