暗黒洋館

暗黒洋館 · 2018/11/05
「お前さん、この先の森に行くつもりかね」 「ああ、そうだが。爺さん、それがどうかしたのか」 「見ず知らずのわしが差し出がましいのは承知の上だが、悪い事は言わない。やめておきなさい。あの森には黒い鳥の悪魔が、血のように赤い眼をした悪魔が住んでいる」 「へえ、悪魔」...
暗黒洋館 · 2018/11/05
 紛糾する場に一つ息をついて、座の主たるバアドは音を立ててカップをソーサーに戻した。その澄んだ音に、席についていた面々は各々の主張をぴたりとやめる。  諸君――と厳かな悪魔王の声が呼びかけた。...
暗黒洋館 · 2018/11/05
 漆黒の蔦が絡んだ大鏡の前で、バアドは腕を組んでいる。階段の踊り場にあるその鏡の面もまた、黒一色に染められた館内を写して暗黒を湛えていた。...
暗黒洋館 · 2018/11/05
 バアド兄さん、と扉越しに呼びかけてくるセラフの声を聞いている。こちらは内、あちらは外。立ち続けるのに疲労を感じてきたから、もうかれこれ一時間はそうしているに違いない。バアドは玄関の扉に背を預けてしゃがむと、呆れ果てた声色を装い言葉をかける。...
暗黒洋館 · 2018/11/05
 影がたゆたう。確信を持って腰を下ろした悪魔の動作に合わせて、足元の暗がりが黒い椅子を作りだした。...
暗黒洋館 · 2018/11/05
 自らが陥った絶体絶命の窮地を、悪魔は笑っていた。遂におかしくなっちまったのか、と徒党の一部が声を上げる。罵倒でもなんでも良かった。ただ、このまま沈黙を守っていたのでは、此方まで気がふれてしまいそうだったのである。優位に立っているのは、彼らにも関わらず。...
暗黒洋館 · 2018/11/05
 館のそこかしこで物騒な音がしている。机や椅子から書棚まで、館内に存在する調度品を残らずひっくり返して回っているかのような騒音だった。  全てが黒で統一された影の館で、主であるバアドは安楽椅子の上で沈黙している。今は深夜。普段なら書斎で気に入りの本でも読んで存分に夜を愛でているはずなのだが、この異常事態においてはそれも叶わない。...
暗黒洋館 · 2018/11/05
 黒だった。その館は何もかもが黒だった。天井、床、壁、調度品に至るまで。息を呑む音すら吸い込まれてしまいそうな漆黒の空間で、バアドは一人紅茶を啜っていた。 「御館様」  主人を呼ぶ執事もまた、黒尽くめである。首から下は成人男性のそれだが、その頭部はカラスの形をしており、その容貌を一層特異なものにしていた。...