英雄双譚

英雄双譚 · 2018/11/05
 剣戟の音が続く。  間髪いれずに打ち合い、ぶつかっては離れる。響き渡る金属音にすら火花が乗る苛烈さをもって、果たし合いは演ぜられた。...
英雄双譚 · 2018/11/05
 今朝、歯を磨きながら見ていたニュース番組の内容をクロは漫然と思い出していた。治安の悪化、組織犯罪の増加。それに伴って次々に発足する民間有志の自警団は、数えられるだけで遂に百を越した。陰惨な事件に対して華々しく語られる各自警団の功績と、二の足を踏み続ける公的機関。...
英雄双譚 · 2018/11/05
 最早、紛糾の声すら途絶えた。渦巻くのは無限の悪意。外殻を脱ぎ捨てて放たれた、吐き気を催すほどの濃厚な害悪である。...
英雄双譚 · 2018/11/05
 世界、憂鬱、加速は止まない。希望は消費されている、絶望は蓄積されている。人は正確さを求めるあまり機械になっていく。機械は人の居なくなった穴を埋めようとして人になっていくのだ。  そのロボットが枯れかけた花を手にして歌いだしたって、何の不思議もなかった。...
英雄双譚 · 2018/11/05
 薄暗く、冷たい劇場に一条の明かりが差す。それは闇を焼き焦がしながら私を真っ直ぐに照らした。沈黙を守ってくれた幕は無情にも上がり、スポットライトは確実に逃げ道を塞いでいる。  言葉を知らない。  目に映る世界は何時も闇の布を被っている。幕が開いたのだ。歌わなければ。  だから私は自分の気持ちを人に伝える事すらできない。...
英雄双譚 · 2018/11/05
「世界の果てが見たいの」  少女は笑う。雨が降っている今のうちにと。  クロは懸命に運ぶ。両手を皿にして水を満たし、そこで泳ぐ人魚を運ぶ。けれど急げば急ぐほど、水は零れた。歩みを緩めては直に雨があがってしまう。  行けども行けども、丸い星を周回するだけ。果てなど見えてこない。...
英雄双譚 · 2018/11/05
 風が透き通っている、そこに紫煙が乗る。もうすぐ夕立が来るだろう、フィンはクロの背中を見つめ、そっと目を伏せた。 「上から見ると、ほーんとゴミゴミしてんのな」...