飴色伝奇

飴色伝奇 · 2018/11/05
 ドア越しの会話、覗き窓を通して網膜が交信する。 「おはよう」 「ええ、おはよう。今日の朝日は一段と眩しいみたい」  彼女はその部屋から出てこようとしない。ドアノブにかかった札は常に就寝中、ルームメイドさえ寄せ付けない。そんな君が喋る様は、立ちはだかる城壁の上から恐る恐る来客を見下ろすお姫様のよう。...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 月光に浮かび上がる鏡が、物言わぬままシアンの姿を映し出す。今宵は満月、それも血のように赤く染まった不気味な月夜だった。...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 天国はある、きっとどこかに。そこへ辿り着く手段はけして難しくはないが、易しくはない。  曰く、自身の取り分を喜んで分け与えよ。曰く、困窮者を見捨てるな。地上における富は全て無意味。...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 そして人魚姫は、愛しいひとを守るために自ら泡になったのでした。  追いかけていた物語は、けして幸福とは言いがたい結末をもって締めくくられた。...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 混じりあうはずのない血が溶け合う異常。満月を恋う激情と、深夜に患う沈着と。  狼男が吸血鬼になる。そんなB級映画よろしくの発想を現実のものにするため、一体どれだけのものが犠牲になっただろう。  目覚めた時、俺は過去の記憶を大半失っていた。...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 その子供はテストを受けた。いわゆる卒業試験みたいなものだ。それを合格できれば晴れて一人前。一角のものとして認められる。  常日頃から完璧や完全を望まれていたその子は、並々ならぬ意欲と、隠し切れない不安を抱いて臨んだ。大丈夫、大丈夫。いつものとおりやってみせればそれでいい。だけど、もし失敗したら?...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 木々の合間から覗く空が真っ赤に染まっている。  見慣れた血溜まりみたいだ。きっと空が血を流しているんだ。  首をめぐらすと、関節が音を立てて軋む。視界の端で何かが動いた。迷わず銃口を向けた。間髪入れずに撃った。それはドクス大将の顔をしていた。 「マヨア、お前はよくやってくれた」...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 ゆっくりとソファに沈みこむドクス大将の背中を、後ろから受け止めるように手を伸ばす。肩から首筋を這うように滑る手は、ようやく心臓の位置を確かめて落ち着いた。大将は至極不快そうに溜息をついただけで、僕の手を振り払おうとはしない。 「吸血鬼の心臓を掴むってのはぞっとしないぜ、マヨア」...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 今回の舞台は古いホテル。中世ヨーロッパの調度品がセンス良く置かれていたりして、一見すると美術館のようにも見える。そんなロマンチックな通路で、大好きな人を見つけたらそれはもう、テンションが上がるのは仕方が無い。...
飴色伝奇 · 2018/11/05
 光が射さないように造られたんじゃなくて、まるでそこは光自身が進んで避けるような醜悪な部屋だった。どんな明かりでさえ照らすのを拒む醜さ。だって白々と明らんだら全部見えてしまうでしょ? 此処でかつてどんな事が行われて、これから何がなされるのかが。...

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